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Visit to Қазақстан Республикасы

カザフスタンに行ってきました。

カザフスタンの英雄・デニステンの1周忌に合わせての旅でした。
デニステンは、ソチ五輪の銅メダリストで、その翌年の四大陸選手権では圧巻の演技で優勝するなど、数々の国際大会で結果を残しました。優れたポジションの美しいスピン、力強いステップが強みでした。さらに、表現力に優れた選手ということでも有名で、音楽が体から奏でるような滑りは、まるで体そのものが楽器になったかのようで、世界中の人々を魅了しました。最高の選手でした。また誰に対しても親切で、人柄も良く、多くのスケーターたちからも愛された、素晴らしい人物でした。

そんなデニステンが亡くなったのは昨年の7月19日。彼の車のミラーを盗もうとした強盗ともみ合いになり、右太もも上部など複数個所をナイフで刺された出血性ショックで、搬送先の病院で旅立ちました。

東京都港区の在日カザフスタン大使館では、彼の死の翌日に、彼を悼む献花台を設けました。訪れたファンによると、その行列はずっと絶えなかったそうです。

一年はあっという間です。彼がいなくなっても、ふつうにこれまでのようにシーズンが開幕し、次々と現れる若い選手が活躍し、試合は始まり、続いていきました。違うのはそこにデニスがいないということです。国のために、未来のために若い子どもたちが、もっとフィギュアスケートを愛し、カザフスタンという国においても、有望なフィギュアスケーターたちが生まれ、活躍していけるようにと、彼は亡くなる前まで、子どもたちのために全力で活動をしていたと聞きます。私は取材でこの3月の世界選手権の現場にいました。彼と同国のエリザベート・トゥルシンバエワ選手がまっ赤な衣装でリンクにあらわれた時は、もう彼女がやってくれるに違いないと思わずにいられませんでした。彼が尊敬するのは同国のフィギュアの世界を切り開いたデニステン選手。冒頭の演技で、シニア初4回転ジャンプを彼女が成功したのを見た瞬間に鳥肌が立ちました。上から、デニステンがふわっと彼女が跳べるように、力を貸したとしか思えず、涙が出ました。

フリー演技の直後のミックスゾーンと個別取材で、彼女にデニステンのことを聞きました。まだ心の整理ができているとは思えず、悲しそうな表情でしたが、それでもしっかりと答えたのは、「今日はデニステンと一緒に滑りました」でした。ほんとうに、その通りだと思います。

亡くなるということは、形を変えて、手段を変えて、愛する人や大切な人に力を貸す場所へ移動するということ。私はそう思っています。デニステンは25年という短い人生でこの世界から去りましたが、これからは違う形で、この世界に力を与える人だと思います。

前置きが長くなりましたが、私は、だからこそ そんなデニステンを思い、彼を忘れたくなく、彼の人生の足跡を知るためにも、一周忌という機会にあわせてカザフスタンへ行く必要があると思いました。週末を利用した2泊4日のショートトリップ。インチョン経由で、初・カザフスタンへ。

訪れたのは、彼が暮らしていたカザフスタンのアルマトイ。深夜にホテルに到着し、翌日から活動を開始。現地のガイドの案内で、デニスゆかりの地を巡りました。

街は想像以上にきれいで、ガイドによれば、6年前に市長が変わってから、街並みが美しく整備されたとのことです。


花屋で、強く意思を持って咲き誇るような、真っ赤なバラを購入し(カザフスタンの習わし)、殺害現場に手向けました。日本から持ってきた手紙は、当時駐車場だったというスペースとの柵に結びました。


国の英雄がこんな場所で亡くなるなんて、誰が想像したでしょうか。現場には、この6月に記念碑が作られました。デニスの人生の軌跡があり、さらに、彼が生前「人生で最も幸せだった瞬間」と表現した時に得たソチ五輪のメダルが、彼の銅像の足元に埋め込まれています。

私が訪れた前日には、高橋大輔さんや浅田真央さんらが事件現場に訪れたようですが、大輔さんは現在ご自身のショーのご準備もあるでしょう。そんななか、時間を作り駆け付けるところに、彼の思いの強さと、彼らの絆の深さを想像します。

20日の夜には、浅田真央さん、無良崇人さん、ジェレミー・アボットさんら世界のスケーターたちが招待され、デニス財団らが主催の「追悼アイスショー」が行われました。

会場の垂れ幕には、宇野選手からのメッセージもありました。
目立ちました。デニステンは天国から気づき、宇野選手に感謝していると思います。そして宇野選手の活躍も全力で応援していることだろうと思います。まだまだ宇野選手と一緒に試合に出たり、話をしたり、二人で作りたかった思い出もあったことでしょう。

みんなが彼のために集まりました。

みんなが彼のために滑りました。

みんなが上を見上げていました。

みんなが心を込めて滑りました。

彼は幸せな人生だったと思います。ずっと仲間は彼を忘れないと思うから。

滑りながら涙を流しているスケーターもいました。

素晴らしいショーでした。

来年も、ずっとこのショーがあるといい。ずっと忘れないで、いたい。それが何よりの供養だと思います。(聞くところによれば、来年も予定しているとか)

アイスショーで締めたその日ですが、会場に行く前には、彼が眠る墓地にも行きました。墓地はとても立派でした。彼が天国で、いろいろとご先祖様に報告しているといい。

その日は、彼が暮らした家や、通っていた大学、彼が生前に経営に関わったカフェ(店名は変更済み)にも足を運びました。不思議なことに、翌日も、街で道に迷い、困ったな、と顔を上げると、偶然この店の前!ということもありました。結局二日の間に3回も訪れ、滞在時間長し、でした。

店内に描かれているのはもちろん、デニステンです。


カザフスタンという国を、デニステン亡き今訪れたことが不思議でなりません。生きている間に会いたかった人ですが、自分もいずれ行くであろう場所にただほんの少し先に行かれているということで。私は、今この世界でできることを、今この世界にいる人たちと力を合わせて心を込めて、一日一日を大切に生きて、過ごしていきたいと思います。そういうことを教えてくれたカザフスタン旅でもありました。

デニステン安らかに。

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